2026年8月14日、Aurora Mobile株式会社は、Exabytesと3年間の戦略的覚書(MoU)を締結したと発表しました。発表資料の正式名称は「Aurora MobileとExabytes、東南アジア全域の企業にAI主導のカスタマーエンゲージメントをもたらす3年間の戦略的MoUを締結」です。
両社は、東南アジアの企業を対象に、AIを活用したカスタマーサービスやAIワークフローなどの展開・共同開発を目指しています。今回の発表で重要なテーマになっているのが、AIに質問へ答えさせるだけではなく、既存の業務システムとつなぎ、実際のタスクを実行できる仕組みへ発展させることです。
ただし、すべてのAI活用で業務実行まで必要になるわけではありません。用途によっては、AIの回答自体が目的になる場合もあります。では、AIに実際の業務を担わせたい場合には、何を考える必要があるのでしょうか。
Aurora MobileとExabytesが3年間の戦略的MoUを締結 AIを企業の業務へ組み込む取り組みを目指す
今回確認できる事実は、Aurora MobileとExabytesが3年間の戦略的MoUを締結したことです。
発表によると、Exabytesは、自社のビジネスネットワーク全体にAurora MobileのAI機能を統合することを検討しています。両社は、中小企業向けのローカライズされたスマートカスタマーサービスから、大企業や政府機関向けのプライベートハイブリッドAIインフラまで、幅広いAIソリューションを共同開発することを目指しています。
組み合わせることが想定されているのは、Exabytesのクラウドインフラや地域に合わせたマネージドサービスと、Aurora MobileのAIワークフロー自動化、オムニチャネル配信機能などです。両社はこれらを組み合わせ、東南アジア全域の企業向けにテクノロジーエコシステムを構築することを目指しています。
重要なのは、現時点ですべての統合や共同開発が完了しているわけではないことです。資料では、AI機能の統合は「検討」、幅広いAIソリューションの共同開発は「目指す」とされています。
Exabytes Group創業者兼CEOのChan Kee Siak氏は、2030年までに100万社の企業へのAI導入を支援するという目標を掲げています。そのうえで今回の提携を通じ、Aurora Mobileの「GPTBots.ai」と「EngageLab」がExabytesの既存能力をどのように補完できるかを探っていくとしています。
この100万社は現在の導入実績ではなく、Exabytes側が掲げている将来目標です。
「意図を理解するAI」から先へ 今回の提携が焦点を当てる業務システムとの接続
今回の提携の狙いを理解する手掛かりになるのが、Aurora Mobile創業者兼CEOのChris Lo氏がGROW AI Summit 2026で行った基調講演です。
Lo氏は500人を超える業界リーダーを前に、「AIジャーニーの3つのステップ」を説明しました。ただし、今回の発表資料では3つすべての内容は示されておらず、具体的に説明されているのは「ステップ2」です。
Lo氏によると、ステップ2とは、AIが利用者の意図を理解できる一方で、タスクを実行するための体系的な接続が不足している状態です。Lo氏は「ほとんどの企業がまだステップ2に留まっている」と指摘しています。
ただし、この「ほとんどの企業」という表現について、発表資料には調査母数や調査期間、調査方法などは示されていません。そのため、企業全体を対象に確認された統計結果ではなく、Lo氏による問題認識として捉える必要があります。
Lo氏が今回強調しているのは、AIが会話できることと、実際の業務を実行できることの違いです。同氏は、東南アジアの企業に必要なのは単なるチャットボットではなく、既存システムの中で行動できるAIだとの考えを示しています。
Aurora Mobileは自社プラットフォームについて、感情分析や会話をまたいだメモリ機能を備えた多言語AIエージェントをサポートすると説明しています。さらに、顧客の意図のルーティング、ERP・CRMシステムとの統合、24時間365日の応答機能を提供するよう設計されているとしています。
ERPやCRMは、今回の資料でAIとの統合先として例示されている既存の業務システムです。
AIが顧客の問い合わせ内容を理解できても、その後の処理に必要な既存システムへ接続できなければ、回答の先にあるタスクまで一貫して実行することはできません。今回の提携は、AIと既存システムをつなぎ、こうした実行段階へ進めることを目指す取り組みと位置付けられます。
なお、Aurora Mobileが示す多言語対応やERP・CRMとの統合、24時間365日の応答などは同社による自社プラットフォームの説明です。すべての導入環境で同じ性能や稼働状況が保証されることを示す第三者評価ではありません。
AI導入を業務成果へつなげるなら「何と接続し、何を実行させるか」まで決める
ここから今回の提携内容を、日本の職場でAIを検討する際の判断へ置き換えてみます。
Lo氏が示した「AIジャーニーの3つのステップ」とは別に、Focus4編集部では、業務実行までAIに担わせたい場合の確認点を「理解・応答」「接続」「業務成果」の3点に整理できます。
1. AIに何を理解・応答させるのか
最初に決めたいのは、AIが何を受け取り、何に対応するのかです。
例えばカスタマーサービスであれば、顧客からの問い合わせ内容を理解して回答することが入口になります。社内業務であれば、従業員からの依頼や質問を受け付ける用途も考えられます。
ここで重要なのは、「AIを使う」という大きな目的だけで終わらせないことです。AIが扱う情報や依頼の種類を明確にすると、その後にどのシステムとの接続が必要かも考えやすくなります。
2. タスク実行のために、どの既存システムと接続する必要があるのか
回答の先に実際の処理を行わせる場合は、AIだけでは完結しないことがあります。
今回の発表でERPやCRMとの統合が挙げられているのも、そのためです。AIが顧客の意図を理解した後に、顧客情報を参照したり、業務上の処理へつなげたりするには、既存システムとの接続が必要になる場合があります。
そのため、AI選定では会話性能だけでなく、「回答後に何を実行したいのか」「そのためにどのシステムとつなぐ必要があるのか」をセットで考えることが重要です。
3. その実行によって、どの業務成果を改善したいのか
AIがシステムと接続され、タスクを実行できるようになっても、それだけで業務成果が生まれるとは限りません。
Exabytes側も今回の提携について、AI導入を有意義な業務成果へ転換することを支援できるか探っていくと説明しています。
だからこそ、AI導入そのものをゴールにせず、どの業務上の結果を変えたいのかを事前に決めておく必要があります。
今回の発表だけから、ERPやCRMとの接続によって売上や生産性などが必ず改善すると判断することはできません。重要なのは、AIが実行する処理と、企業が改善したい業務上の結果を対応させて考えることです。
自社で業務実行型のAIを検討する場合は、次の3点を確認すると整理しやすくなります。
- AIに、誰からのどのような依頼や情報を理解・応答させたいか
- 回答の先でタスクを実行するために、どの既存システムとの接続が必要か
- そのタスクをAIが実行できるようにすることで、どの業務上の結果を改善したいか
3つを別々に考えるのではなく、「この依頼を理解したAIが、このシステムにつながって、このタスクを実行し、この業務結果の改善を目指す」という一連の流れとして設計できているかが確認点になります。
3年間の提携で問われるのは、計画されたAI活用が実際の業務へどう実装されるか
Aurora MobileとExabytesが今回発表したのは、3年間の戦略的MoUと、今後目指す取り組みの方向性です。
ExabytesはAurora MobileのAI機能を自社のビジネスネットワークへ統合することを検討しており、両社はAIソリューションの共同開発や、東南アジア全域を対象としたテクノロジーエコシステムの構築を目指しています。
一方、現時点の発表では、今後共同開発される各ソリューションの具体的な導入企業数や、それによって生まれた業務成果まで確認できるわけではありません。
今後この提携を見る際には、「AIを何社へ導入したか」だけでなく、どの業務システムへ接続されたのか、AIがどのタスクを実行できるようになったのか、そして企業側が目指した業務成果とどのようにつながったのかが重要な確認点になります。
企業が自社でAI活用を考える場合も同じです。AIの回答性能だけを比較するのではなく、その回答の先にある業務まで見渡すことで、「AIを導入する」という抽象的な計画を、実際の仕事に落とし込んだ検討へ変えやすくなります。
出典: Aurora MobileとExabytes、東南アジア全域の企業にAI主導のカスタマーエンゲージメントをもたらす3年間の戦略的MoUを締結
