2026年7月8日、リクルートワークス研究所は「過剰学歴に関する調査」報告書を発表しました。過剰学歴とは、従業員の最終学歴が、その仕事に就くために通常必要とされる学歴水準を上回る状態です。同研究所の調査では、回答者の30.7%が、過去12カ月に募集時の学歴要件を上回る人を1人以上採用したと答えました。問題になるのは学歴が高いこと自体ではなく、採用する市場、実際の仕事内容、入社後の処遇がかみ合わない場合です。
過剰学歴で企業と求職者に何が起きるのか
企業側では、仕事に本当に必要な能力を整理しないまま「より学歴の高い人を採った方が安全だ」と判断すると、募集する市場を見誤る可能性があります。高校卒業程度の知識で担える仕事でも大学卒の採用市場だけを狙えば、より多くの企業と人材を奪い合うことになります。その結果、求人広告、紹介手数料、選考にかかる時間などの採用コストが増えても、仕事内容に合う人を採れるとは限りません。
さらに、入社後にもミスマッチが表面化するおそれがあります。報告書では、過剰学歴の若手社員について「仕事への不満が増えやすい」に肯定的な回答が42.3%、「早期離職が増えやすい」が45.7%、「意欲・エンゲージメントが下がりやすい」が38.6%でした。これは管理職や人事担当者らの認識を尋ねた結果であり、実際の離職率を測った数字ではありません。ただし、採用時に期待した仕事と、配属後に任される仕事の差を放置しない方がよいことは示唆しています。
また、求職者側では、募集条件を満たしていても、仕事に不可欠ではない学歴を理由に、より学歴の高い応募者が優先される可能性があります。学歴を能力の代わりに使う選考が続けば、その仕事を十分に担える人が採用機会を失い、企業も適任者を見落とします。企業と求職者の双方にとって、学歴の高さではなく、仕事との適合を見極めることが重要です。
過去12カ月に過剰学歴採用があった回答は30.7%
調査は2026年3月19~25日、従業員100人以上の企業・組織に所属し、採用、配置、育成、評価制度などに直近1年間で関わった経営者、管理職、人事担当者を対象に行われ、4,080人が回答しました。
過去12カ月の中途採用・新卒採用で、募集要件より高い学歴の人を採用したケースを尋ねた結果は次のとおりです。
※4項目は同じ質問への回答であり、互いに重ならない区分です。
| 過去12カ月の状況 | 回答割合 | 回答内容 |
|---|---|---|
| 複数あった | 20.9% | 該当する採用を複数把握している |
| 1件あった | 9.8% | 該当する採用を1件把握している |
| なかった | 41.4% | 該当する採用を把握していない |
| わからない | 27.8% | 回答者には判断できない |
「複数あった」20.9%と「1件あった」9.8%を合わせた30.7%が、過去12カ月に1件以上あったという結果です。
※「わからない」27.8%は、回答者がその有無を判断できなかったという意味であり、採用後の追跡状況などを示す数字ではありません。
なぜ過剰学歴が起きるのか
それでは、なぜ企業の採用活動では過剰学歴が発生するのでしょうか。
報告書で最も多かった具体的な理由は「応募者全体の学歴が上がったため」の17.2%でした。企業側の事情では「自社の賃金・等級制度に合わせて採用しているため」が12.0%、「離職対策として、定着しやすい学歴層を採用しているため」が10.1%、「自社の採用要件の変化」が9.8%でした。
※この設問は複数の理由を選べるため、各割合を合計して100%になるものではありません。
この結果から、原因を応募者側だけに求めることはできません。応募者の教育水準が上がる一方で、企業の求人要件、賃金・等級制度、将来の配置方針が以前のまま残れば、仕事内容と採用する人の学歴にずれが生まれます。
さらに、職務に必要な知識や技能が言語化されていない場合、面接担当者は短時間で確認できる学歴を、能力の代わりとなる判断材料にしやすくなります。「仕事に合うか」より「学歴が高い方が無難」という判断が優先されると、過剰学歴採用と採用機会の偏りが同時に生じます。
採用ミスマッチを防ぐ3つの見直し
過剰学歴を理由に応募者を排除したり、学歴要件を一律に変更したりする必要はありません。見直すべきなのは、学歴と仕事を結び付けている採用の仕組みです。
- 職務から求人要件を決める:実際の業務、必要な知識・技能、資格、入社後に習得できる範囲を先に整理し、その仕事に学歴要件が本当に必要かを確認します。これにより、必要以上に競争の激しい採用市場だけを狙う状態を避けられます。
- 求人を横断して候補者を検討する:応募先の仕事より高い教育水準や別の専門性を持つ人が来た場合は、不採用か採用かの二択にせず、社内の別求人も確認します。より合う仕事があれば、仕事内容と条件を示したうえで、本人の希望を確認して提案します。ただし、応募者の同意なしに配属先を変えてはいけません。
- 仕事と処遇を選考中に説明する:採用する場合は、担当業務、賃金・等級、配置、昇進機会を具体的に伝え、応募者の期待とずれていないか確認します。入社後も、説明した役割と実際の仕事が一致しているかを確かめます。
職務から要件を決めれば、採用市場の選び間違いを減らせます。求人を横断して検討すれば、企業は候補者を生かしやすくなり、求職者も能力に合う選択肢を得られます。そして、仕事と処遇を事前に説明すれば、入社後の「聞いていた仕事と違う」というミスマッチを防ぎやすくなります。学歴の高低ではなく、仕事、処遇、本人の希望をそろえることが、過剰学歴採用への現実的な対応です。
出典: 「過剰学歴に関する調査」報告書
