「いまの仕事を辞めても、約3カ月は生活できる」と答えた人は60.6%でした。ただし、家族構成と雇用形態で数字には大きな差があります。平均値だけで安心度を判断せず、どの層に負担が集中しているかを見る必要があります。
調査の母数を先に確認
リクルートワークス研究所の追加調査は、全国就業実態パネル調査2025の回答者のうち30~59歳を対象に2025年2月に実施され、有効回答は1万9,247人でした。今回扱う設問は、前年12月に就業していた1万5,511人に「現在の仕事を辞めた場合、金銭的に3カ月程度生活できるか」を尋ねたものです。
全体では「できる」が60.6%、「できない」が22.8%、「わからない」が16.6%でした。ここでの数字は本人の回答であり、実際の預貯金額や家計収支を測定したものではありません。
主要類型で25.9ポイントの差
主要な家族・雇用類型を比べると、「できる」は共働き・双方正社員・子どもなしの69.6%に対し、単身・非正規・子どもなしでは43.7%でした。両者の差は25.9ポイントです。
| 家族・雇用類型 | できる | できない | わからない |
|---|---|---|---|
| 単身・正社員・子どもなし | 63.7% | 19.4% | 16.9% |
| 単身・正社員・子どもあり | 54.0% | 29.2% | 16.8% |
| 単身・非正規・子どもなし | 43.7% | 35.7% | 20.6% |
| 共働き・双方正社員・子どもなし | 69.6% | 15.4% | 14.9% |
| 共働き・双方正社員・子どもあり | 65.6% | 19.7% | 14.7% |
この比較は、雇用形態や家族構成が生活余力の原因だと証明するものではありません。収入、資産、住居費、配偶者の収入、扶養人数など複数の要因が重なります。また、単身・正社員・子どもありの回答者は277人など、類型によって人数も異なります。
「3カ月」を自分の数字に置き換える
判断材料として有効なのは、回答率を眺めるだけでなく、自分の固定費に置き換えることです。
- 住居費、食費、光熱費、通信費、保険料、返済額など最低限の月額を出す
- 最低生活費の3カ月分から、すぐ使える預貯金を差し引く
- 不足があれば、失業給付の開始時期や社内制度を確認する
- 家族の収入を前提にする場合は、同時に収入が減るケースも試算する
企業側では、離職防止の材料として個人の預貯金を聞くのではなく、休職・休暇、相談窓口、福利厚生、退職時の手続きなど、既存制度が従業員に伝わっているかを点検する方が現実的です。
数字が示すのは、備えを確認する入口
60.6%という全体値だけでは、残る約4割が「できない」または「わからない」と答えた事実を見落とします。家族・雇用形態別の差と調査の限界を同時に見たうえで、個人は家計、企業は制度案内を具体的に確認することが重要です。
