2026年6月9日、M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社は「中小企業の経営者における事業承継方法の優先順位と意思決定の停滞要因」に関する調査結果を発表しました。将来的に事業承継を検討している中小企業経営者を対象に、承継の優先度や準備状況、希望する方法、意思決定を進めるうえで不足している情報などを調べたものです。
親族への承継、従業員への承継、M&Aなど複数の選択肢がある中で、経営者はどの段階で判断に迷うのでしょうか。準備状況、希望する承継方法、方法を選べない理由、求めている情報を順に追い、意思決定が止まる場面を整理します。
将来的に事業承継を考える中小企業経営者1,002人を調査
調査は2026年5月1日から2日にかけて、PRIZMAによるインターネット調査として実施されました。回答者は、調査回答時に「将来的に事業承継を検討している中小企業の経営者」と回答したモニター1,002人です。モニター提供元はサクリサです。
そのため、結果を「中小企業経営者全体」の傾向として一般化することはできません。あくまで、将来的な事業承継を検討している経営者を対象にした結果として見る必要があります。
事業承継の優先度は約7割が「高い」、一方で4割は準備未着手
経営課題の中で事業承継の優先度が高いかを尋ねたところ、「非常に高い」が23.7%、「やや高い」が47.2%でした。合わせると70.9%で、一次資料は「約7割」と整理しています。
一方、一次資料のまとめでは、全回答者の4割が事業承継について「まだ何も準備できていない」と回答したとしています。優先度を高いと答えた割合と準備未着手の割合は別の設問なので、同じ回答者がどの程度重なっているかは、この資料だけでは分かりません。
また、後継者の状況を尋ねると、「後継者候補が複数いる」が34.8%、「すでに後継者が決まっている」が28.2%、「後継者候補はいない」が37.0%でした。
準備状況とのクロス集計では、「すでに完了ないしは具体的な準備や情報収集を進めている」と回答した層の内訳で、後継者候補が複数いる人が42.8%、すでに後継者が決まっている人が35.8%でした。
これに対し、「まだ何も準備できていない」と回答した層では、後継者候補がいない人が60.3%でした。ただし、この未準備層の中にも「後継者候補が複数いる」が22.9%、「すでに後継者が決まっている」が16.7%存在します。
ここで42.8%や35.8%を「後継者候補がいる経営者のうち、その割合が準備済み」と読み替えてはいけません。あくまで、それぞれの準備状況に属する回答者の中で、後継者の状況がどうなっているかを示した内訳です。
第一希望は親族承継、第二希望では45.1%が「現時点では選べない」
次に、現時点での第一希望と第二希望を比べると、回答の分布は次の通りです。
| 事業承継方法 | 第一希望 | 第二希望 |
|---|---|---|
| 親族への承継 | 36.7% | 8.0% |
| 従業員(役員含む)への承継 | 29.3% | 24.2% |
| M&A(第三者への売却) | 15.3% | 22.7% |
| 現時点では選べない | 18.7% | 45.1% |
第一希望では親族への承継が最多でした。一方、第二希望になると「現時点では選べない」が45.1%で最も多く、具体的な代替案まで絞り込めていない回答者が多いことが分かります。
ただし、第一希望と第二希望は同じ調査時点の希望順位を尋ねた設問です。「親族承継からM&Aへ移っている」といった時系列の変化を示すデータではありません。
方法を選べない理由の最多は「具体的な情報が不足している」
第一希望を「現時点では選べない」とした回答者に理由を尋ねると、「各事業承継方法についての具体的な情報が不足している」が34.8%で最多でした。「将来の事業環境が不透明で、方向性を決めにくい」が26.7%、「自社にとってのメリット・デメリットが整理できていない」が24.1%と続きます。
この設問では、具体的な情報の不足と、自社にとってのメリット・デメリットを整理できていないことが上位に挙がっています。少なくとも第一希望を選べない層では、自社に当てはめて選択肢を比べるための材料が不足していることが、判断上の課題として表れています。
経営者が求めるのは、自社へ当てはめられる具体的な判断材料
第一希望を選べない人に、どのような情報やサポートがあれば選択を進められるかを尋ねると、「各事業承継方法のメリット・デメリットの情報」が33.7%、「費用や税金に関する詳細な情報」が28.9%、「事業の将来性に関する客観的な評価」が25.1%でした。
一方、第一希望として親族承継、従業員承継、M&Aのいずれかを選んだ人に、本格検討の後押しになる情報を尋ねた別の設問では、「自社と同規模・同業種の事業承継事例」が34.0%、「事業承継の進め方」が33.4%、「親族承継・従業員承継・M&Aそれぞれの違いや比較情報」が28.0%でした。
この2つの設問は回答対象が異なるため、数値を一つの順位表にまとめて直接比較することはできません。ただ、方法をまだ選べない段階では比較材料を、第一希望がある段階では具体例や進め方を求める回答が上位に出ていることは確認できます。
事業承継を決める前に「4種類の判断材料」がそろっているか確認する
ここまでの回答を、事業承継を検討する際の情報収集順に組み替えると、次の4種類に整理できます。
- 承継で守りたいもの:従業員の雇用や企業理念・文化など、承継で重視したいことを言葉にします。
- 後継者・承継先の現状:候補者がいるのか、すでに決まっているのか、社外への承継も比較対象にする必要があるのかを確認します。
- 各方法を自社へ当てはめた情報:メリット・デメリット、費用、税金、事業の将来性など、回答者が不足を感じていた材料をそろえます。
- 実行判断に必要な具体例:同規模・同業種の事例、全体の進め方、他の承継方法との比較を確認します。
これは「親族承継がよい」「M&Aがよい」と特定の方法を勧めるものではありません。今回の調査で、経営者自身が不足している、あるいは必要だと答えた情報を、判断の順序としてFocus4編集部が整理したものです。
今回の調査では、事業承継を重要な経営課題と捉える回答が多い一方、未準備の層も存在し、方法を選べない回答者では具体的な情報不足が上位に挙がりました。まず方法を決め打ちするのではなく、「何を守りたいか」「誰に引き継ぐ可能性があるか」「比較に必要な情報は何か」「実行イメージを持てる具体例はあるか」を順番に確認することが、検討を進めるための整理になります。
出典: M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社「【中小企業の事業承継に関する実態調査】4割が事業承継の準備に「未着手」。意思決定を停滞させる「情報不足」の実態と、経営者が本当に求める「具体的な判断材料」」
