AIを学ぶ、社員にAIを学ばせる、業務でAI・ITツールを導入する――いずれも「AIにお金を使う」場面ですが、確認すべき公的支援制度は同じではありません。制度選びの入口は、AI関連かどうかよりも、誰が何に費用を払うのかで分かれます。
まず、本人が自分の能力開発のために講座を受ける場合は、厚生労働省の「教育訓練給付金」が候補になります。一定の受給要件を満たす人が、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練を受講・修了した場合に、教育訓練経費の一部が支給される制度です。対象となる教育訓練には、専門実践、特定一般、一般教育訓練の3種類があります。AI分野の学習で利用を検討する場合も、受講する講座が指定対象かどうかを確認する必要があります。
一方、在職者が転職まで含めて学び直したい場合は、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」が別の入口です。対象は、サービス登録時と初回のキャリア相談時に在職者で、雇用主の変更を伴う転職を目指す人です。キャリア相談、リスキリング講座、転職支援を一体で受ける仕組みで、採択された補助事業者を通じて講座費用の負担が軽減されます。単に講座を受けたい場合とは制度の前提が異なります。
会社が負担するなら「社員研修」と「ITツール導入」を分ける
会社が社員に職務関連の訓練を受けさせる場合は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」が候補です。事業主等が雇用する労働者に計画的な職業訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などが助成されます。今回扱う「人への投資促進コース」には、デジタル人材・高度人材を育成する訓練や、定額制の訓練なども含まれます。
これに対して、会社が業務で使うAI・ITツールそのものを導入する場合は、中小企業・小規模事業者等向けの「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠」が別の候補です。自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援する制度で、ソフトウェア購入費やクラウド利用料のほか、機能拡張、データ連携、導入設定、マニュアル設定、導入研修、保守サポートなども対象として示されています。
ただし、通常枠ではソフトウェアの導入が必須で、「汎用・自動化・分析ツール」に当たる汎用プロセスだけでは申請できません。1種類以上の業務プロセスを持つソフトウェアが必要です。また、ここでいう「導入研修」は対象ソフトウェア等に付随する役務であり、一般的な社員教育を対象にする人材開発支援助成金とは分けて考える必要があります。

AI関連の費用で公的支援を探すときは、「本人の学習」「転職を伴う本人のリスキリング」「会社による社員研修」「会社による業務用AI・ITツール導入」のどれに当たるかを先に整理すると、確認すべき制度を絞れます。そのうえで、対象講座や対象ツール、受給・申請要件を各制度の公式窓口で確認することが必要です。
厚生労働省「教育訓練給付金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
https://careerup.reskilling.go.jp/worker/
厚生労働省「人材開発支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
中小企業デジタル化・AI導入支援事業「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠」
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal/
