2026.06.07

20代の57%が通勤時間を最優先!介護派遣で発生する「年代別ミスマッチ」を解消する鍵

著者:佐藤シュウ[Focus4 ライター]

明治大学卒業後、IT系人材国内組織コンサルティングファーム、ベンチャー企業の経営企画室を経て独立。現在は複数企業の事業開発アドバイザーを兼任。生産性を最大化するためのリモートワーク戦略、情報 asymmetry(情報の非対称性)を解消するマネジメント手法、大企業とスタートアップのオープンイノベーションなど、現場発のリアルなペインに寄り添った打ち手を発信。

介護派遣の仕事選び、年代別ニーズが明らかに。20代は「通勤時間」、50代以降は「給与」を最重視。情報の非対称性を解消し、ライフステージに応じた求人設計が採用成功と定着率向上の鍵です。

年代別の働き方とは

 2026年5月8日、株式会社DYMのグループ会社である株式会社DYMエールケアリンクスより「介護派遣の仕事選び、年代別で異なるニーズが明らかに」についての調査結果が発表されました。

 超高齢社会における介護人材の不足が深刻化する現代において、多くの企業やマネジメント層は「採用してもすぐに辞めてしまう」「求職者との条件が折り合わない」という現場発のリアルなペインに直面しています。

 この発表内容は、まさにそうした企業と求職者の間に横たわる情報の非対称性を解消し、定着率を向上させるための重要な組織・経営課題に関連しています。

要約

・介護派遣求職者200名を対象とした調査。

・20代は「通勤時間」を57%が重視する一方、50代・60代は「給与」を約35%が最重視。

・ライフステージに応じた柔軟な求人設計が採用成功の鍵。

介護求職者200名の本音を電話調査で可視化

 今回の発表内容は、2025年2月12日から2025年12月12日までの期間に、同社の介護派遣サービスに登録している派遣社員の求職者200名を対象として実施された調査の全体像を示すものです。

 電話によるヒアリング形式で「仕事選びにおいて最も重視する条件」を単一回答で明らかにしたものであり、介護人材の確保という大きな経営課題に対して、ライフステージごとに異なる求職者の意思決定の実態をデータとして浮き彫りにしています。

年代別ニーズの背景と今すぐ求人票に反映すべき具体策

 本調査の詳細な分析から、全年代で「給与」と「通勤時間」が上位にランクインしているものの、年代によって求める条件には明確な差があるというファクトが明らかになりました。

 具体的には、20代では「通勤時間」を重視する割合が57%と圧倒的に高く、すぐ働けることや通いやすさといった機動性を求めています。

 これに対して、30代では給与(38%)と通勤時間(33%)のバランス型へと移行し、50代になると給与(35%)に加えて「曜日固定(14%)」、60代でも給与を重視しながら「勤務時間(5.5%)」など、年齢が上がるにつれて安定性や負担の少ない環境を求める傾向が強まります。

 ここで特定すべき構造的課題は、企業側が求職者の「ライフステージの背景」を見誤り、一律の募集要項を出してしまっている点にあります。

 20代が通勤時間を最優先するのは、タイパ(時間対効果)を最大化してプライベートや自己投資に時間を割きたいという労働観の表れです。

 一方で、50代・60代が曜日や時間を指定するのは、自身の体力面だけでなく「親の介護」や「家庭の役割」といった固定的な生活スケジュール(ダブルケア)を並行して抱えているケースが多いためです。

 この世代間の「働く目的の非対称性」を無視して求人を出し続けていては、採用費の浪費と早期離脱を繰り返すだけです。<b>さらに、これは今回の介護業界に限った話ではなく、深刻な労働力不足に直面するすべての業界や職種において、全く同様のことが言えます。</b>

 この歪みを解消し、現場の生産性を最大化するために今すぐ起こすべき解決策は、単に条件を「柔軟にする」と書くのではなく、各年代のデータに基づき求人票へ記載する具体情報をターゲットごとに最適化すること、そして個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方(裁量的な制度)を受け入れる社内システムを整えることです。

 具体的には、求職者の求めるデータと、それに応じて求人票に盛り込むべき実務的な記載内容、および企業側が備えるべきシステムは以下のように整理できます。

ターゲット年代 データが示す真のペイン 求人票に必ず入れるべき具体的な情報・打ち手
20代(若年層) 通勤時間(57%)= 無駄な拘束時間の排除(タイパ志向) ・「〇〇駅から徒歩〇分」「主要駅からの直行直帰ルート」を明記
・「応募から最短〇日で稼働可能」など、即時性をアピール
・残業なし、定時退社が徹底されている実態を数値で開示
50代・60代(シニア層) 給与(約35%)+ 曜日固定(14%)・勤務時間(5.5%)= 私生活との両立制限 ・「毎週火曜・木曜のみ固定」など、生活リズムが崩れないシフト例を明記
・固定曜日のみの稼働でも、しっかりと稼げる「月給・日給のシミュレーション」を提示
・「身体的負担の少ない施設形態(デイサービスなど)」を選択可能である旨を記載

 深刻な人材不足を乗り越え、採用成功率を高めるためのポイントは以下の3点に集約されます。

・求人コミュニケーションの非対称性解消:20代には機動性を担保する「効率的な働き方」を、シニア層には生活を守る「予測可能性(固定シフト)」を切り分けて求人票のメインキャッチに据える。

・個別ライフに合わせたシステム設計:従来の定時制や正社員といった硬直的な枠組みに縛られず、個人の事情に合わせて勤務時間や休日をコントロールできる、柔軟な受け入れシステム(タスクの切り出しやシフト管理の自動化など)を社内で構築する。

・定着率向上のロジック:求職者が「この条件やシステムなら自分の生活スケジュールを崩さずに貢献できる」と確信できる状態(動機 = 環境の一致)を作ることで、就業後のミスマッチを根絶する。

 企業側が求職者の年代別ニーズの「背景」まで深く洞察し、それらを先回りして開示・受容する求人設計へと転換すること。これこそが、情報 asymmetric を解消し、超高齢社会におけるビジネスの競争力を高める真の打ち手となります。